耐熱性・高強度繊維ケブラーを発見した化学者

防弾ベストや航空宇宙材料、さらには光ファイバーケーブルの補強材に至るまで、幅広い分野で活躍する超高強度繊維「ケブラー」。この画期的な素材の開発には、デュポン社に所属していたステファニー・クオレク氏(Stephanie Kwolek)の重要な功績があります。

1960年代初頭、デュポン社で新たな合成繊維の研究に従事していたクオレク氏は、特定のポリマー溶液が従来の常識では考えられないほど粘度が低いにもかかわらず、高分子の重合に成功しました。これは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)という剛直な分子構造を持つポリマーが、溶液中で液晶状態を形成したためです。

この特殊な液晶状態の溶液を紡糸すると、分子鎖が繊維軸方向に高度に配向し、分子間に多数の水素結合が形成されます。この結果、PPTA繊維、すなわちケブラーは、鋼鉄の約5倍という優れた引張強度と高い耐熱性を発揮するのです。クオレク氏の発見は、高性能ポリマーの分野に新たな地平を拓きました。