ルビーとサファイアの色彩の化学
ルビーとサファイアは、どちらもコランダムという酸化アルミニウム(Al₂O₃)を主成分とする同じ鉱物からできています。しかし、ルビーは鮮やかな赤色を呈し、サファイアは美しい青色を示すなど、その色は大きく異なります。この色彩の違いは、コランダム結晶にごく微量に含まれる不純物元素によって生じる現象です。
ルビーの赤色は、三価のクロムイオン(Cr³⁺)がアルミニウムイオンの一部と置き換わることで発現します。Cr³⁺イオンの電子は、結晶の電場(結晶場)によってエネルギー準位が特定の形に分裂します。この分裂した準位間で、特定の波長の光エネルギーを吸収し、結果として赤色以外の光が吸収され、残りの赤色の光が透過・反射されるため、ルビーは赤く見えるのです。
一方、サファイアの青色は、通常、二価の鉄イオン(Fe²⁺)と四価のチタンイオン(Ti⁴⁺)が共存することで生じます。これらのイオン間で電子移動(電荷移動遷移)が起こり、可視光域の幅広い光を吸収するため、補色である青色が強く現れるのです。また、サファイアには鉄イオン単独で黄色を呈するものや、マンガンイオンでピンク色、バナジウムイオンで緑色を呈するものもあり、不純物の種類やその量によって多彩な色が生じます。
このように、純粋な物質では無色透明なコランダムも、わずかな不純物元素が加わるだけで、私たちの目を楽しませる多様な色彩へと変化するのです。

